金魚の昼寝
(Kingyo-no-Hiruné)
作詞:鹿島鳴秋作曲:弘田龍太郎
英訳:山岸勝榮
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A Goldfish's Midday Nap
Lyrics: KAJIMA, Meishu Music: HIROTA, Ryutaro
English Translation: YAMAGISHI, Katsuei
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mp3「金魚の昼寝」
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1.
赤いべべ着た

可愛
(かわい)い金魚
おめめをさませば
御馳走
(ごちそう)するぞ

A pretty little goldfish
Dressed up in red clothes
When you wake up
I'll give you a wonderful meal


2.
赤い金魚は

あぶくを一つ
昼寝
(ひるね)うとうと
夢からさめた

The pretty little goldfish
Blew one bubble
And he woke up from a dream
In his midday nap


無断引用・使用厳禁
Copyrighted
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この歌には著作権はありません。
イラストはこちらからお借りしました。




 下の文章は大学院修士課程1年生の大塚孝一君が書いたものです。
興味深い文章ですので、同君の了解を得て転載します。

山岸勝榮教授

 山岸教授がお訳しになりました「金魚の昼寝」A Goldfish's Midday Napを拝読いたしました。以下に分析をお書きします。

《原詞から分かる作詞者の金魚への思い》
 山岸教授がブログにお書きになっているように、この歌詞から、作詞者の鹿島鳴秋がどのように金魚を“見ていたか”ということが非常によく分かります。
 第1連では、「べべ」「おめめ」「御馳走」という語が用いられています。「べべ」は、いわゆる“赤ちゃん言葉”ですから、本来は赤ん坊に使うことが目的で用いられるはずです。しかし、この「べべ」という語から、鹿島鳴秋にとっては、金魚は、単なる“魚”ではなく、赤ん坊と変わらないほど愛らしい生き物だということが、わかります。同様のことが「おめめ」という語からも分かります。最後の「御馳走」ですが、金魚に対して“エサ”と言わずに、“御馳走”と言うところは、やはり鹿島が金魚を大事にしている思いが表れています。
 第2連では、第1連に見られるような“特別な”語を用いているわけではありません。しかし、歌詞全体をよく観察すると、昼寝時に口からあぶくが一つこぼれ、夢から覚める金魚が歌われていることがわかり、鹿島が金魚鉢に入っている金魚を(おそらく)近いところでじっと夢中で眺めている様子が読み取れます。
 第2連で歌詞は終わっていますので、その後の金魚の様子は分かりません。しかし、第1連では、「おめめをさませば 御馳走するぞ」と歌い、第2連で「昼寝うとうと 夢からさめた」とありますので、仮に第3連があれば、眠い目をしながら“御馳走”を食べる金魚の様子が歌われるでしょう。しかし、この連を歌わないところに、日本人性が表れているような印象をこの歌詞から受けます。

《作詞者の思いは英語で表すことができるか》
 上述の点は、山岸教授の御訳ではどう表されているでしょうか。
 「べべ」はclothesとなっています。「べべ」という語がもつ柔らかい響きがない訳語ですが、これが翻訳の限界と言えるでしょう。山岸教授のお言葉をお借りすれば、「近似値的訳語」ということになります。翻訳の世界では、どうしてもこのようなある種の“妥協”が必要になってきます。しかし、決して翻訳不可能では無いということは、山岸教授がブログにてお書きになっているとおりです。(http://blog.livedoor.jp/yamakatsuei/archives/2013-09-24.html
 「おめめ」も「べべ」同様ですが、ここでは慣用句的な使用ですから、eyesを訳すことは避けるべきであるということになります。
 「御馳走」の訳語はa wonderful mealです。ここでの「御馳走」は別にいつもより高級なものを指しているのではなく、いつもの“エサ”とは少々異なるもの、“特別な”ものということでしょうから、その点を踏まえた訳語にする必要があります。
 第2連の御訳では、特別な翻訳技法が用いられているわけではありませんが、andがあることで、物事の順番を確実に表すことにより、金魚を熱中して見ていた様子が分かるように思えます。
 最後ですが、詞全体を通して見ますと、goldfishにpretty littleという形容詞が付いていること、そして、goldfishをitではなく、heという代名詞が当てられている点も、鹿島にとっての“金魚”がどのような存在であったかを表す好例と言えます。

平成26[2014]年3月24日
  大塚 孝一